―おまえは覚えているだろうか。

昔の記憶。

斎藤とは、毎日のように会ってるというよりは見かけると言った方が正しい気がする。
早朝の電車の中、
ほとんどの生徒はまだ眠ってるんじゃないかという時間に
彼は いつものようにいつもの場所に座っている。
片手には竹刀、そして片手には本を持って。
さらさらと本をめくる彼はひどく美しく見えた。
そんな彼にみとれる毎日。
俺は彼をみるために 毎日その時間の電車に乗った。
寝坊して朝食を食べる時間がなくても、
彼をみるためにひたすら電車を目指して走った。
ひたすら呪いのように 自分をあの電車へと走らせた。
―斎藤。
彼がこの学園にくるのか。
彼は俺を知らないのに 俺は彼を知っている。
「あっ因みに歳。斎藤君はおまえのクラスだぞ。」
よかったな。と言ったが きっと俺と斎藤の関係を知ってるからこそ組んでくれたのだろう。
「ありがとうな。」
俺の言葉に近藤さんは 軽く笑みを浮かべそのまま職員室から出ていった。
さて、教室でも見てくるかな。
今日は入学式だった。
学校自体は明日からだが 教師には教卓の片付けそして生徒の名簿確認など色々ある。
めんどくせぇなぁと思いながら重い足どりで 教室を目指した。
俺の教室は1-6、、、っと。
ガタン、教室から音が聞こえた。
誰もいないはずの教室から聞こえた物音。
生徒は午前入学式でもう午後にはいないはずなんだが。
まさか、、、。
不審者、、、?このご時世に真っ昼間っから出てくる馬鹿がいるのか。
そんなんじゃPTAなんかが黙っちゃいないぞ、こりゃ。
と扉を静かに掴み中の者に気付かれないよう気配を消す。
ふぅと息をはき、一呼吸。「こんな、真っ昼間から何してやがる!」
俺の声が教室に響き渡った。

NEXT→参章