―おまえは覚えているだろうか。

昔の記憶。

いつもの朝。
高く積み上げられた書類の束。
職員室の珈琲の香り。
―何もかもがいつも通りだった。
「歳ー!これをみてくれ!これを!」
そして、いつものこの声。何もかもが変わらない。
変わらないことに苦笑しつつも、声の主の方へ自然と顔が傾く。
「何だよ、近藤さん。 何かいいことでもあったのか。」
といい、近藤さんはうんうんとうなずいて、
右手に握られていた書類を俺の机に叩きつける。
「歳!斎藤君がこの学園に入学してくるぞ!」
―斎、藤、、、?
斎藤といわれて真っ先に 浮かぶのは奴しか、、、。
「何をぽかんとしている!歳!斎藤君がこの学園に入ってくるんだぞ!」
近藤さんはとても嬉しそうだった。
「斎藤って、、、。一か?」恐る恐る聞いてみた。
その先の言葉が 俺にとって良い答でありますように。
「何を言ってる。だから最初からそうだと、、、って書類にかいてあるだろ。」
「なぁ、近藤さん。」
そういって、佐藤とかかれた書類を見せる。
舌をだしてすまん、歳という近藤さん。
嬉々とした笑みを浮かべてますます嬉しそうに笑った。
書類を見てみると
あの女性のような端正の顔立ちの奴がいた。
―斎藤。
―斎藤がこの学園に?
これこそ運命というのではないかと思った。
俺は自分が新選組だったことを覚えてる。
近藤さんも、総司も、平助も、原田も、新八も、山南さんも、
みんなあの頃の記憶があったからここにいる。
なのに奴にだけはないらしい。
前世でした交わした約束。

゛桜の下でまた逢おう゛

新選組だからこその約束。
いつ散るかわからない自分の身、 来世では皆幸せになろう。
共に道を歩こう。
そう誓ったはずなのに
桜が咲く頃出逢うはずの仲間は1人足りなかった。
―斎藤、一。
奴が1人足りなかった。
俺の前世からの想い人。

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