SSL 沖斎 一君カツアゲされるの巻。




―僕の一君に触らないでくれるかな?


いじめっこ、いじめられっこ。


「なぁ、一君。」
あぁまたいつもと同じだ。口許をまるで糸で吊り上げたかのごとく笑う彼ら。
「なんだ。」
本当は答えたくなかったし聞きたくもなかった。
「一君、昨日給料日だよね。お金持ってるよね一?」
けたけたけたけた笑う彼ら。何がそんなにおかしいのだろうか。
「あぁ、持っている。」
だから、なんだ。
「僕〜今日お金なくてさ〜、一君お金貸してくれない?」
またいつものだ。
このやりとりは 目を瞑れば何回も繰り返されている光景。
「何故だ。一昨日も貸した気がするが。
金自体はあるが、あんたらに貸す金は持ち合わせていない。」
はっきりと言った。
あんたらに貸す金はないと。
俺の態度に腹が立ったのか嫌な笑みを浮かべて
「あれ〜一君〜。土方先生との関係みんなに話してもいいのかな〜?」
クスクスとこちらを見ながら笑う奴ら。
奴らの1人が息を大きく吸い込んだ―
「みんな〜土方先生と一く「何万必要なのだ!」」
奴が言葉を続けようとするのを阻止するかの如く言葉を重ね、カバンから乱暴に財布を取り出した。
それを見ていた彼らは クスクスと笑い、俺の頭に手をおき、撫でるような仕草をしながらこう言い放った。
「一君ってほんとかわいいよね。
ほら、腕だってこんなに華奢だしさ、白いし。ほんと、かわいい。
おまけに犬みたいでさ。
「わん」とか鳴かないの?鳴いたらもっとかわいいのに。勿体ないね。
でも忠犬って感じかな。まぁばらされたくないならしょうがないけどね。
てことで三万、、、ッ!」
ガタンと机が鳴った。
その瞬間奴らが目の前から消えていた。
その代わりに人が立っていた。
自分が無意識のうちに 蹴ったのだろうか。
いや、そんな訳がない。
机はあろうことか、 掃除用具箱に投げ出されていた、というより正しくいうと突き刺さっていた。
騒がしかったクラスも 一瞬で凍てついた。


―奴の存在で。

ゆっくりと奴らの前に足を歩ませ、しゃがんでる奴らを睨みをきかせた。
そして、低く暗い声で
「何、僕の一君に何してるの。」
そこにいた者全てが皆、 彼の放つ殺気に凍りついていた。
―彼の名は沖田総司。
俺の幼なじみであると同時に俺の―恋人でもある。
「あっ、あぁ!すいませんでした!ごめんなさい!」
さっきまであんなに余裕をかましていたリーダー格の奴がおたおたと許しを乞うていた。
それもそのはず、 総司は入学してすぐに 沢山の上級生を負傷させたといういわば、どの学年にも恐れられる存在。
しかも上級生を負傷させた理由が
「一君に話しかけたから。一君を見てたから。」
という何故か全て俺に関係するものだった。
今の関係なら理解できるが…いかにも嫉妬深い総司らしいものだった。
彼は更に殺気をたぎらせ
「僕の言葉が理解できない?僕は僕の一君に何をしたのか聞いてるの。」
ひぃぃと悲鳴をあげながら彼はとうとう追い詰められその場に立ち尽くしてしまった。
「ねぇ、まだ話の途中なんだけど。非常識にも程があるんじゃない?」
そう言って彼の首を片手で持ち、 ギュウギュウと締め付けていた。
「あっ、あぅふっ!」
彼は息ができないらしい。
「何、聞こえないんだけど。」
顔が笑っているが、目は笑っていない。
翡翠色の目の中では何かが燃えたぎっていた。
「ねぇ、何してたか教えてよ。てかさっき一君の頭撫でてたよね?何してたの?
答えないと首、折っちゃうよ?いいの?僕、今暇じゃないから早くして欲しいんだけど。」
「あっあっ、、、」
「ふぅん。そんなことも喋れないんだ。だらしないね。君って。」
不敵な笑みを唇に浮かべて、、、
俺はいつしかこの場の 傍観者になっていた。
何か話さなければ、、、 彼は死んでしまうかもしれない。


「―総司!」

その瞬間総司はぱっと彼を放した。
さっきまで翡翠の目に燃えていた炎は消え 穏やかな緑が戻ってきた。
「一君!」
どすん。彼はそのまま落下してしまったらしい。
今まで息ができなかったからか、酷く息遣いが荒い。
「大丈夫?一君! どこか痛くない?
僕がお弁当を一緒に食べようと思ってきたら奴らが 君を囲んでたから!本当に大丈夫?」
心底心配そうに俺の顔を覗いてくる総司をかわいいなぁなどと思いながら、、、。
しかし、ここは叱らなくてはならないところだと自分を制した。
「総司、度と言うものを考えろ。今のはどう考えても目にあまる行為だったぞ。」
えへ、とさっきの行為からは考えられないような 幼い笑みを浮かべる。
「あっ、ヤバいよ!一君!次の授業まで後5分しかない!せっかくの一君との時間が、、、。
殺るなら殺るで足くらい折っておけばよかったな、、、。」
心底残念そうにする総司。
「総司!」
また冗談だか冗談じゃないんだが際どい発言を放つ総司に渇を一つ。
きっとそれは真実なんだろうけど。
「それより、一君!はやく!時間ないよ!」
俺の手をひきながら走る総司。
総司が授業に遅れることなんて日常茶飯事なのに 何故、今日は急ぐのだろうか。
「何故、急いでいるのだ?」
走ったまま総司は顔だけこちらに向けていった。
「だって、一君この後授業でしょ?僕は別にどうでもいいんだけど。」
皆は彼のことを 気まぐれや、自己中心的などというが、 俺はそれは違うと思う。
照れがあるからか自分から何をしたと言うことはないが、
意外にも人のことを 考えているし、任された事は最後までこなす、
根はしっかりした人間なのだ。
「あっ、そういえば、、、。」
「なぁにはじめく―ん。」
ぴたっと止まり 総司は俺を見る。
「次は空きだった…。」
―怒っているのだろうか。総司は下を向きふるふると震える。
「すまない、総司…。」
そして総司を見やると 何処か嬉々としていた。
「一君!じゃあ次の時間まで二人でラブラブできるんだね!」
「へ?」
「屋上行く?保健室借りる?僕的には保健室の方がラブラブできると思うんだけど。どっちがいい?」
「なっ、何の話だっ!」
総司は俺の手をとり口づけてくる。
愛しい柔らかい感触が今俺の手の甲にある。
「お姫様。御戯れの御話ですよ。」
―そんなかしこまった言い方をするなんてずるい。
「勝手にしろ。」
いい放つと総司は俺をひょいと抱き上げお姫様だっこをした。
「かわいいよ、一君。 ずっと大好きだから。 だから、ずっと僕のものでいて…。」
そんな悲しい事を囁かれ 俺も本音を口にする。
「お前こそ他の奴に惚れたりなんてするなよ…? お前は俺のものなんだから…。」
その姿で自然に唇を合わせれば愛が紡がれる気がして。
「わかりました、お姫様。そこまでお連れしますよ。」
「あぁ、よろしく。」
総司の足音しか聞こえない廊下を俺達は進んでいく。


行き先は 保健室。




あっ、土方さんとの関係ってのは石田散薬のことですよ!
別に浮気とかそういうのじゃなくて・・・
だから安心してください。
一君は無事です。(笑)

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