君の虜。

ー猫みたいだね。一君。

「一君!」
「どわっ!」
という驚いた声を露にする一君。
これが僕と一君の朝の挨拶。
ただ、僕が一方的に抱きつくだけなんだけど。
しかし、寝惚けてるのか
一君は瑠璃色の目をとろんとさせて此方をみやってくる。
「そ…じ…?」 名前を呼ばれる。
あぁ、また一君にきゅんときてしまう。
「そうだよ、総司だよ。」優しく抱きしめた。
彼はしっかり者だけど、 凄く寝起きが悪い。
いつも、きちんと着ている着物も肩まではだけていたり、
髪もあらん方向にいっていたり、、、。
こんな姿を誰かに見せたらというか見せたくないし、見せる気はないけど、
誰でも下心を抱いてしまうだろう。
服の乱れを直してから 一言。
「一君。じっとしててね。髪結ってあげる。」
まだ一君は寝惚けているのか、 「あぁ。」
と生まれたての赤子のような柔らかい笑みを浮かべた。
いつもは よっぽどじゃないと笑わない一君。
本当に…やられる。
一君は簡単に僕の理性を壊すことができる。
しかも、天然だからすごくたちが悪い。
一君を鏡台の前に座らせ
僕は櫛を取るため鏡台の引き出しに手を伸ばす。
「一君。 今から髪とかしてあげるからね。 痛かったらいってね。」
僕の言葉に素直に頷く。
―コクン。
紫紺の髪の毛を少しずつといていく。
といていく度に一君が
ふにゃふにゃ動き 彼の猫っ毛が僕の腕を撫でる。
―正直、くすぐったい。
でもその感覚を与える人が自分の思い人だと思うと
その感覚も愛しいものに変わっていく。
「―一君痛くない?」
彼の猫っ毛に触れながら問う。
「―くす、ぐった、い。」
可愛く猫の様なしぐさを 繰り返す彼。





僕はもう彼の虜。