現パロ 沖斎 死ネタ
―もう一度、たった一度でいい。君に会いたい。
僕の知る一君は病弱だったけど、いつも笑っていたから。
棺桶から覗く一君の顔はとても綺麗だったから。
僕は誰にも見られないようにいつもより冷たい一君の頬にキスをした。
今は眠いから眠ってるだけだなんて自分に言い聞かせて。
―頭の片隅ではわかってることなのに。
笑みを口許に含み白装束を身に付けている。
遠い夢へ帰るための準備。
―もう、君はこの世にいないの?
僕をここに残して行ってしまったの?
他の物の情景によりそれが真実だと無理矢理教え込まれた。
ハンカチで涙を拭う遺族。棺桶の中の一君を取り囲む白い菊達。
そして棺桶に封をするために打ち付けられる釘の音。
その音はまるで僕の心まで打ち付けられるみたいで
一君がいなくなったことを僕に無理矢理諭しているようで、不思議と胸が痛んだ。
―一君はただ寝ているだけなんだ。
深く遠い夢の中で、寝ているだけ。
胸の痛みと共にその言葉を自分自身に強く打ちこんだ。
一君と僕は恋人同士。
今日は一君と僕が付き合ってちょうど三年の日。
―記念日に葬式なんてちょっと馬鹿げてるよね。
一君と僕の家はお隣同士で昔からよく遊んでいた。
一君は病弱でよく学校を休む子で、それでいて凄く意地っ張りで負けず嫌いで、
でも信念が強くてかっこいい子だった。
そんな一君に憧れて、そんな一君とずっと一緒にいたくて。
馬鹿だった僕は頭の良い一君と同じ学校に行くために一生懸命勉強をした。
嫌いだった勉強も君を思えば頑張れた。
―どんな時でも君と離れたくなかったから。
頑張った成果、一君と同じ学校にも入れたし、同じクラスにもなれた。
…なのに、病弱な君は高校に入って少ししてから入院する事になった。
僕は君と会うために毎日病院に通った。
―少しでも君と一緒にいたくて。
日に日に衰弱する君の顔を本当は見たくなかったけどでも、
僕は明日は少し元気になってるんじゃないかなんて
そんな小さな希望を胸に毎日毎日、病院へ足を運んだ。
―ただどんな時でも君の側にいたくて。
あんなにも近かった君との距離がこんなにも夢に見た明日より遠いなんて、知らなかった。
僕の目の前には一君を誘う業火の焔がごうごうと音をたてて燃えていた。
―本当に君はもうこの世にいないの?
今日の約束はどうするの?一君が僕にくれた精一杯の我が儘。
「明後日は記念日だから、何処かに連れていってくれないか?」
なんて君が苦笑いを含みながら言うから、僕は君が望むままにしようと凄く楽しみにしてたのに。
まず、一君が見たいって言ってた映画の時間を調べたり、
海に行ってビーチバレーをしようなんて君が言うからビーチボールだって沢山買ったのに。
一君が雑誌を見ながら
美味しそうって言ってた普段では入れないような高級なお店、
カラオケにもいきたいって言ってたよね、予約だって入れといたんだよ?
それで、夜は海辺の星空の下互いの好きなところを言い合って一緒に寝ようって言ってたのに。
―僕は君にとってそんなに頼りない存在だったの?
君の我が儘が聞けないとでも思ったの?
そんな話をした後に一君がぼそっと呟いたのが聞こえた。
「記念日までもつといいな…。」
ただただ、星空を、いや星空より遠くを見据えてそんな言葉を紡いでいた。
僕はその言葉は空耳だと思うことにした。
結局その言葉は真となった。
一君には自分の体がもう何日しかもたない事がわかっていたのかもしれない。
だから、普段は我が儘なんて言わない一君があんな我が儘を吐いたのだろう。
一君は棺桶のなか安らかに眠ってる。
ただ永遠という波に乗ってどこまでもどこまでも深い夢へ沈んでいく。
もう話せない、声も聞けない、君からの電話もメールもない。
この世界で僕はどうやって生きていけばいいの?
この想いが溢れてくる前に。
この雫が堕ちる前に。
もしも叶うのならもう一度だけ、たった一度だけ。
“君に会いたい”
僕の隣で、笑ってほしい。もう一度だけ。
たった一度だけでいい。
もう一度君の声で君の言葉で“総司”と呼んで。
本当は一度なんかじゃ足りないけど。
大好きな君だから。
もっと、ずっと、永遠に
君の笑顔を見ていたかった。
君と一緒に笑っていたかった。
叶うのなら…。
君と一緒にどこまでも。
―消えてしまった愛しい人は業火に焼かれて灰になる。
彼もいつかは灰の様に忘れ去られる存在になるとしても
僕は絶対に君を忘れない。君の面影を。君の笑顔を。幻ではない、君の存在を。永久に。
例え、君が星になったとしても。
僕は君を忘れはしない。
僕はただただ君のいない世界で君を忘れないたった一つの存在として生きていく。
君の心は僕の心だから。
僕の心は君の心だから。
いつか君と出逢う楽園で共に永遠の愛を謳おう。
焔の中に入れられた棺桶はあっという間に業火に舐めつくされる。
業火は僕の恋人を焼きつくす。
ただ、骨になるまで永遠に。
ごうごうごうごうと泣き叫ぶ焔の音は
まるで、一君が泣いているようで。
知らず知らず、僕の瞳からもひとすじの雫が零れ堕ちた。
急いで、
外に出て空を見上げれば
天高く昇って行く烟が見えた。
その烟はどこか輝いていた。
そんな烟を見つめていたらまた雫が零れ堕ちた。
ぽたぽた、ぽたぽたと下に堕ちては夏の暑さで蒸発する。
ただ、それの繰り返し。
空を仰ぎ見ながら精一杯の声で叫んだ。
天に昇る君にも聞こえるようにと。
「待っててね!一君!」
そう叫ぶと烟は一層高く舞い空中で踊っていた。
それが僕には一君が笑っているように見えて。
夏の空。蝉の鳴き声。天高く舞い昇る烟。
不釣り合いな組み合わせだが今はすべてが愛しく感じて。
いつか君と出逢う楽園で
今度は永遠に長い旅路を歩んでいこう。
いつまでも、いつまでも。君のそばで永遠に。
終わり方微妙―。
一君が死んでしまいました。
死ネタしか書けない自分が憎い。
あっ、ちなみに今回は私の大好きなアーティストの
Iwishの歌詞中から結構御言葉を頂きました。
歌詞最高なんですよ。
ありがとうございます。
次は萌え系を書けるようがんばるんば。(笑)
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