シリアス 斎千 NL




―約束はできない。


夢か、現か。


俺は夢を見た。

すごく現実味があって嫌な夢。

副長がいなくなるという夢を。

それまで 俺に微笑みかけていた副長が、

気づくと頭を射抜かれ朱を散らしながら

地面に倒れていく、そんな夢を。

はっ、と起きると 雪村が俺の傍らにいた。

雪村は心配そうに 俺を覗き込みながら

俺の額の上の布を 手近なところにある桶で洗い、

そして冷やしてからまた布を額に載せた。



「斎藤さん、大丈夫ですか?」



「あぁ、大丈夫だ。 ただ少し嫌な夢を見ていただけだ…。」



そういうと雪村は少し不思議そうな顔をしながら

俺の眼へと手を伸ばしてきた。



「だから、涙を溜めているんですか…。」



「何の事だ。」



「これが、証拠の涙です…。 どうされたんですか…?

言い出しにくい事だとは思いますがよろしければ私にも教えて下さい。」



真剣な眼差しに 細い指に残る俺の雫。



「たかが、夢なのに…。

たかが幻なのに…。

こんなにまで俺が翻弄されてしまうなんて…。

俺は武士失格だ、な。」



そう自嘲気味に言うと 柔らかくふわりとしたものが俺を包んだ。



「斎藤さんは武士失格なんかじゃ、ありません。

今じゃ、立派な武士の鑑じゃないですか。」



「あんたにそう言われると何故か心が軽くなった気がする。

ありがとう、雪村。

今更だが、 あんたが良ければ 俺の夢の中の愚かな話を 聞いてはくれぬか…?

あんたになら話してもいいと思ったのでな。」



そういうと雪村は何故か

頬をほんのり紅く染めながら大きく縦に首をふった。

一通り話を終えると 俺の隣からは すすり泣く声が聞こえていた。

大粒の涙を下に落としながらそれでも何か必死に堪えているようだった。



「何故、お前が泣いている。同情なら結構だ。

俺はそんな生温い感情に慰められるほど落ちぶれてはいない。」



「いいえ、そんなんじゃないんです…。

いや、斎藤さんから話してくれたことが嬉しくて嬉しくて…

不謹慎だとは思うんですけど…すいません…。

後、斎藤さんは勘が鋭い方なんで…

もしかして当たってしまうんではないかって…。

そう思ったら 本当に起こってしまいそうで…。」



「あんたは副長の事が心配か…?」



「…はい。

私は土方さんに命を助けて頂きましたし、

土方さんの一生懸命な姿大好きですから、凄く心配です。

もちろん、斎藤さんも沖田さんもですよ。

普段は新選組のために

心を鬼になさっていますが、本当は凄く優しい人なんだと思います。」



真剣な瞳には揺るがない焔が写し出されていた。

お世辞やおだてではない、本心からの真実の言葉。



「あんたには何でもわかるんだな。

俺が悪かったすまない。

あんたまで暗い気持ちにさせてしまって…。」



と言うと雪村の指が

まるで 俺が次吐き出す言葉を 遮るかように俺の唇に触れた。



「斎藤さん。

さっき、私言ったじゃないですか。

゛斎藤さんから話してくれたことが嬉しかった゛って。

だから、謝らないで下さい。

私はもっと斎藤さんに頼って欲しいです。」



「あぁ。

これでも俺はあんたの事を頼りにしているつもりだ。雪村。

しかし、これからは 更に戦禍に巻き込まれるだろう。

安全など俺達と行動する度皆無となることだろう。

だから、だからどうか死なないでくれ…。

約束だ。」

「私は死にません。

約束します。

土方さんのためにも斎藤さんのためにも。

それより、その言葉は私よりも土方さんにいってあげて下さい。

土方さんは一番戦禍に身をおいている方ですから…。

私は新選組と行動を共にしてこの戦争の結末をこの目で見届けたいんです。

だから、斎藤さんこそ。 生きてください。」



俺はその言葉に素直に「あぁ。」とは頷けなかった。

何故なら自分は約束はできない、そう解っていたから。

この命は俺を認めてくれた新選組のために

いや、土方さんのために

戦いの中で朽ち果てようと決めていたから。

いつか、あんたの前で堂々と頷ける日がくればいい。

しかし、それは叶わぬ夢になりそうだ。

俺達は少し開けられた障子の隙間から覗く

月夜に舞う桜に想いをよせながら

自分の運命を折り重ね

一枚一枚と落ちる桜を愛しく想いながらただ、春の夜空を見上げるのだった。










二期おめでとう!

てか、オープニングの最初ヤバくね!

土方さんが馬に乗ってやってくるシーン。

あれがハジマリからオワリに繋がるんだなとか。

本当すっげぇ。

ありがとう、二期。

ありがとう、薄桜鬼。

こんな駄文でごめんなさい。

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