土沖 ギャグ? デレ方さん×甘えんぼ総司。


―これからも僕の事もっともっと、愛してくださいね。


ただ、僕を愛して…?




「抱いてください。」







ある夜、俺がもう寝ようとして灯りを消そうとしていると図体のでかい迷惑な客が枕を持ってやってきた。

「何をだ。」

と言ってやるとはぁと溜め息をついて。

「やだなぁ、僕をですよ。ぼ・く・を。」

なんて馬鹿な事を言いやがるから柄にもなく驚いてしまった。

「だって、僕達恋人になってもう1ヶ月だって言うのに

いっこうに土方さんは襲いにこないし、未だキスもしてもらってないし…

だから、いつまで経っても来ないんで僕から夜這いに来ちゃいました☆」

なんて突拍子もないことを言うから

ふわふわとやってきた眠気も何処か遠くへ飛んでいってしまった。



―こんの、ばか!俺だって我慢してたのによ!



しかし、ここで許してしまう訳にはいかない。

明日は幕府のお偉い方と会って話さなきゃいけねぇ大事な用事があるんだ。

だから、そこは譲れない。

「嫌だ!俺は寝るんだ!明日だって早いんだ!

今度にしろ!てか、今日は寝かせろ!」

と言って総司が奪っていった布団を奪い返し頭からすっぽりと被った。

すると一際、大きな溜め息が聞こえた。



―ったく、何だってんだ。こっちだって必死に我慢してるっていうのに。



襖に手をかけ、襖を開ける音が聞こえたので出ていったと思うと…

「あ〜。 土方さんが抱いてくれないんなら、左之さんの所に行ってこよーっと。

左之さんなら可哀想な僕の事慰めてくれるだろうな〜。」



―ガバッ



聞こえた言葉に布団を勢いよく剥ぐ。

「わ―ったよ!! 仕方ねぇな!こっちだって我慢してたんだよ!

だから、 原田んとこには行くなよ。

抱けやいんだろ、抱けや!ほら、こっちこいよ。」

俺も大人げねぇなぁなんて思いながらも結局、総司を自分の布団へと招き入れた。



―なんでこいつに対してはこんなに甘いのだろうか。まぁ、好いた者の弱味って奴か。



そんなことを思いながらふっと自嘲の笑みを溢した。

しかし、いつまで経っても総司が俺の布団に入ってくることはなかった。

「どうしたんだ?そんなとこに突っ立ってねぇで 入るならさっさと入れ。」

と言って総司を見るも 奴はぴたりと動きを止め俯いたままだった。

「…土方さんって本当に恥ずかしい人ですね…。

そんな、殺し文句吐ける人なんてそうそういませんよ。」

下を向きながら何やらもごもごと喋る。

「んだよ、聞こえね―よ。総司。言いたいことがあるならはっきり言えよ。」

とかしづいてみると 口に手を当て何やら翡翠色の目をさ迷わせている、総司。

それに気のせいか顔がほんのり紅い。

「どうした?総司。顔紅ぇぞ。」

と言って頬に触れると飛び跳ねる身体。

「…ひ、土方さん!それ、わざとやってるんですか!

わざとなら犯罪ですよ!」

と俺の手を振り払った。

「はぁ、なんのこった! ったく、てめぇは…。

俺はお前が望むようにしてやったってのに何が不満なんだよ!」

と言ってやると総司は何故かもぞもぞと照れながら

「…だ、だって、だって いくら土方さんがデレ方さんだからって…

まさか土方さんから左之さんの所に行くなって言ってくれるなんて思ってなかったんだもん…。

だから、僕、嬉しくなっちゃって…。

だ、だって!土方さんが柄にもない事言うからいけないんですよ!」

と俺の枕を投げつけた。



―ボスッ



嗚呼、尚口に手を当てながら話す、総司。

煽ってんのか、こいつ。

「おい、総司。 デレ方さんって誰の事だ、こら。

俺は別にデレちゃいねぇ。てか、お前だってその格好誘ってんのか?」

「何言ってるんですか。

僕は端から貴方を誘いに来たって言ってるのに。

この格好だって わざとやってるのに…。

ぼ、僕だって本当だったら恥ずかしくてやりたくないですよ、こんな格好。

土方さんがただ嫌々言うから、僕がその気にさせてあげないと、という僕のありがた―い親切心ですよ。

感謝して下さいね?」

幾らか自分の調子を戻した総司が偉そうに言う。

「ったく、明日は早く起きなきゃいけねぇって言うのに…、

昔からそうだけど お前って、本当我儘だよな。」

そういうと総司はにんまりと意地悪そうに 笑った。

「…とか言いながら、 僕の我儘聞くの結構好きなくせに。」

苦笑いを浮かべながら、

「まぁ、そうかもな。 好きなやつの我儘なら聞いてやりたいと思うが、お前のはやりすぎだ。

お前のは我儘とは言わねぇ。」

と言うと総司の細い指が眉間をつついた。

「痛ぇな!今度は何だよ!!」

というとふふふと笑みを溢しもう一度、眉間をつついた。

「土方さん、僕はね。貴方が僕を怒るために

つくるこの眉間に寄せられた皺が大好きなんですよ。

なんか、すごく愛されてるって感じがして…。

もちろん、土方さん自身も大好きですけど。

だから…これからも僕の事もっともっと、愛してくださいね。」

子供の様な 意地悪な笑みを未だ張り付けながら

サラサラと笑う、総司。

俺は総司の吐く甘い言葉に深く深く溺れていく。

―こいつにはいつまで経っても敵わねぇな…。

「ったく、お前には敵わねぇよ、やってやるんだから明日は責任もって起こせよ。」

「いやですよ。起こしたら行っちゃうんでしょ。

…僕の側からいなくなっちゃうんでしょ?

どうしても行きたいんなら自分で起きてくださいよ。僕はわざわざ起こしません。」

ぷいと言って何故か涙を溜めながらそっぽを向く。

そんな姿見せられたら…。大きく広い背中に抱きついた。

その途端ビクッと震える総司の背中。

「…すまねぇな。 明日は大事な用があるから…。

遅れちゃならねぇんだよ。だから、な?

どっちにしろ明後日は 誘うつもりだったから…。」

「嫌だ、今日がいい…。」

溢れ落ちそうなほどの涙を翡翠色の瞳に溜めて此方を向く。

「総司。 俺が、悪かった。

もう、せっかく我慢してたのによ。

いい加減俺も限界だ。いいか?」

「だから、最初から言ってるじゃないですか!

ほら、はやく土方さん。 抱いてください。 僕は、貴方がほしい。」

「総司、来い。」

その言葉を合図に総司は俺の胸に飛び込んできた。

―ったく、でっかい図体してるくせにこういうとこは子供なんだよな。

「土方さんだ―いすき。

だから、ずっと僕の側にいてくださいよ。愛してます。」

「わかってるよ。 俺だってお前を離せねぇで困ってるくらいだ。

離してって言っても離さねぇからな。

後で嫌がっても知らねぇぞ。」

「嫌がりませんよ。

だから、早く…。 僕は貴方の全てが欲しい。」

とせがむ総司をゆっくり押し倒すと 2人はお互いに唇を求めあった。

「もっと…、もっと愛してください…。

僕はもっと貴方に愛されたい。」

はぁ、さてさて 愛し愛し合う、2人の向かう先は何処か。

ただただ、夜の甘い雰囲気に抱かれいつまでも眠りつかされるのか。

永遠の2人になるまで抱きつき合うのか、さぁ、果たして…?

2人が向かう先は何処?





翌朝、手足に重い金属の感触。

その感触を振りほどきたくて手足を動かすが その感触はとれない。

もしや…と思い手をみると俺の手にはどこからか持ってきたのかなんて、

皆目見当がつかぬが 鉄製の手錠に繋がれていた。

だけではなく、繋がれた先は総司の手。

ただただ、俺は予期せぬ事故にただ焦るしかなかったが、

傍らには子供のような笑顔を浮かべながらスヤスヤと寝息をたてている

口元に笑みを浮かべて寝てるでっかい奴。

そして奴の、左手に握られているのは2つの鍵。



―まぁ、愛されてるんだろう、な。



俺はいかにも奴らしい愛情表現についつい苦笑いを隠せなかった。



初、土沖。
どうだったでしょうか!
最初は 「抱いてください。」って言葉しか出てこなくて
本当は沖斎にしようとしてたんですけど、
総司ってあんまり一君に我儘言わないなぁと思って まさかの土沖。
土方さんってデレるとかわいいよね〜。(笑)

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