学パロ 平斎 平ちゃんが一君に勉強を教えてもらいます。




―俺が勝ったらデートしてくれ。


ピリオドから始まる出発点。


「ねぇ、一君この問題わかんないんだけど!」
「どれだ、見せてみろ。」
今、俺に 勉強を教えてくれてるのは
剣道部の副主将の斎藤先輩、でも今は俺だけの家庭教師一君。
なんで、 一君が俺の家庭教師かというと…
俺が一君に必死に頼み込んだから。
「なぁ、お願いだよ! 一君!
次のテストどうしても頑張らなきゃいけないんだよ!
俺、学年トップの一君に教えて欲しいんだよ!」
「土方先生や永倉先生に頼めばよかろう。」
「そうだけど! 俺は一君に教えてもらいたいのっ!」
俺の剣幕に押されてか 一君は首を縦にふった。
そして今に至る。
紫紺の髪から覗く 一君の白い首筋が 俺の目の前を占領した。
いますぐにでも 食らいつきたい。
そしてそのペンを持つ指先も真剣な深碧の瞳にも。
君の全てがいとおしいんだ。
「ねぇ、一君。お願いがあるんだけど。」
不意に一君が此方を振り向いた。
俺は一君を覗き込むように顔を近づけた。
「平助。顔が近い。」
あぁ、なんでこんな冷静なんだろ。
俺に興味がないからかな。
俺が逆だったら驚きすぎて倒れてしまうだろうに。
俺だって負けない。
一君に勉強を頼んだのにはわけがある。
この気持ちが一君に伝わるまで。
伝えなくちゃ、俺の想い。
「一君。俺がもし学年トップになれたら一君、俺とデートして!」
一君は目を見開いた後 苦笑を浮かべながら
「学年トップに教わって
学年トップを狙おうなんていい度胸だな。」
ふっと一君は笑う。
「まぁ、俺を越せたらだけどな。
全教科でいいのか?俺は満点しか取ったことがないのだが。
お前も満点でしか張り合えないぞ。」
「いいんだっ! そうじゃなきゃ意味がないから…。
一君、勝負だ!」
「うむ。望むところだ。」
「俺が勝ったら… そ、その…デートだからな!」
「あぁ、わかった。 だったら、さっさと勉強しろ。
取れるものも取れなくなるぞ。」
と言った後、一君がトイレにいく途中に
「デートできるといいな。」
ぼそっと呟いたように聞こえた。
「一君!ここの式は!」
「さっきのやつと同じだ。覚えろ。絶対出る。」
「一君!この字は?」
「再読文字だ。覚えておけ。」
一君は俺が聞いた事を 一秒と間を置かず
返してきた。
そんなやりとりをしているとこの人は本当に頭のいい人なんだなって思った。
―ふと疑問が一つ。
「一君は勉強しなくて大丈夫なの?」
「あぁ、俺か?」
少し間が空いてから 一君は再び口を開く。
「大丈夫だ。 人に教えていると 自分で勉強するより
自然と頭に入ってくるらしい。」
ふわっと笑う。
こういう笑顔に 俺はやられてしまうんだろうな。
「そっ、そうか! 俺も頑張らなくちゃ!」
一君に勉強を教えてもらって2週間の月日が流れた。
―いよいよ、明日がテスト本番だ。
「一君。俺頑張るから。
一君そしたら前に言った約束絶対守ってよね。」
また笑みを浮かべたが それはいつもと同じ笑みではなく、
どこか辛そうな何かを目にした時の笑みだった。
「…あぁ。」
「一君?どうしたの?」
「なんでもない。気にするな。」
今日の一君は一際活気がなかった。
俺が何を言っても 右から左へ流れていくらしい。
「一君…?」
また虚空を見つめたままの一君。
「明日で終わりなんだな。頑張れよ、平助。」 そういう一君の顔は凄く悲しいもので。 もしかして俺とのデートに期待してくれてるのでは
ないかなんて思ってしまう。
「一君、俺は絶対全教科100点とってみせるよ。
だから、だから。」
俺の言葉の途中で 一君は俺の唇を閉ざした。
「うっ…。」
俺は初めての行為に
それがしかも
俺が愛しいと思っている人からされたということに頭に甘い電撃が走った。 一君はすぐ正気に戻ったらしく
「すまない…。」
と小声で言ってきた。
俺が唖然としていると
一君は顔を少し俯かせながら呟いた。
「平助。これは俺なりの最上級の応援だ。
だから明日は勝ちに行け。約束だ。」
一君に抱きつきながら
「うん、わかった約束だよ。
俺、頑張るから期待して待っててくれよな!」
―試験当日。
朝携帯を見ると 一君からメールがきていた。
がんばれ。というたった 四文字だったけど
俺にとってはどんな長い文
よりぐっとくるものがあった。
「よっしゃ!」
自分に渇をいれ、家を出た。
『試験はじめっ!』
各クラスの教師が同時に言い放った。
俺もシャーペンを走らせる。
あっ、この問題一君とやった!
これもだ!あっ、これも!今までの自分ではありえないほどスラスラと解ける。
わからない問題なんて 一つもなかった。
そんな感じでテストは終わった。
俺はあらかじめ一君に
結果がわかるまで会わないと言ったから一君とは
しばらく会えない。
願うは100点満点。
ただそれだけだ。
―運命のテスト返却日 『今から、テスト返却するぞ!
今回は凄く頑張った奴がいるみたいだな。』
と言って土方先生はこっちを向いた。
「お、俺!?」だよね?
一君とあんだけやったのに。俺じゃないはずがない。
順々に名前を呼ばれる 俺の心臓は高鳴った。
『―藤堂平助。』
「はい!」
『頑張ったな、全教科合わせて間違ってたのは 英語のピリオドだけらしいぞ。
新八と左之がずっと粗探ししてたが他には見つからなかったらしい。
よく頑張ったな。平助。』
褒められたのは嬉しいけどテストを受け取り
涙がひとりでに出てくる。
『どうした。平助。 嬉し涙か?』
苦笑いしながら俺の頭をなでてくれる。
惜しかったな。
確かにそうだったかもしれない。
しかし、事実は今までと変わらず俺は一君とデートができない。
本当だったら一君に一番に見せに行きたかったけど
この結果を見せる勇気を俺は持っていなかった。
テストを返されて 帰りのHRも終わり、
帰るために廊下に出ると
一君が窓際に立っていた。
「どうだったのだ。平助。」
柔らかく笑う一君。
「俺の負けだよ。ごめんね一君。せっかく教えて貰
ったのに。」
精一杯の笑顔を作ったつもり、だった。
「平助、泣いているのか。」
一君の手が俺の瞼に触れる。 触れたかと思うと今度は 柔らかく抱き締められた。「いや、平助。 今回は俺の負けだ。
俺は英語で二つピリオドを付け忘れてしまってな。
全教科100点満点ではないんだ。」
そういった一君に向き直る。
「一君は英語何点だったの?」
「98点。」と一君は短く答えた。
「え!マジで!俺と同じ間違いだし!俺は99点…。ってことは!一君!」
「あぁ、おめでとう。」
嬉しい…嬉しい…嬉しい!一君と、一君とデートができる!
「一君!大好き!」
柔らかく俺を包んでいた一君を一際ぎゅうっと抱き締めた。
「あぁ、俺もだ。」
と言って一君も負けじと 抱き締め返してくる。
嬉しい。嬉しい。
テストで勝ったことが。 はたまた一君が俺の気持ちに答えてくれたことが。
込み上げてくる喜びを 抑えて一君を見る。
「一君。ありがとう。」 ふと思いだし、 一君の前に手を出す
「じゃあ、改めまして 俺とデートをしませんか?」
―もちろん、一君に拒否権なんてない。
「あぁ、よろこんで。」
一君は俺の手をとり にっこりと微笑んだ。
部活も終わり、 みんなが帰宅する時間。
誰にも見つからないように夕暮れの校舎を一緒に駆けた。
「一君!今週末は空けておいてね!」
誰もいない屋上で二人橙色の空を見上げる。
「あぁ。もう、既に空けてある。」
「えっ…先約…?」
一君は最初から俺になんか期待してなかったんだ。
「違うぞ、平助。」
俺の心情がわかったのか、一君は諭すように俺に告げた。
「お前とのデートのために開けておいたんだ。」
「じゃあ…。仮に俺が100点取れなかったらどうしたのさぁ。」
「ただ、信じていたからな。」
「ありがとう、一君。」
ふと、横をみると一君は 何処か虚空を見つめてて。
「いつから好きだったのだろうな。」
俺にいうわけでもなくただそう呟いた。
「なぁ、平助。 今週末はどこに行くんだ?」
「一君の好きなところに行こうよ。今度は俺の好きなところ。
そうやって好きなものからもっとお互いを好きになろ。」
「あぁ。」
「これからもっと好きになろ。」




夕暮れの空。

俺達は薄い月を見つめ

永遠の愛を互いに誓った。



初平斎!どうだったでしょうか。
最後はとてつもなくいい加減。
しかも続きます・・・。

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